びびび備忘録

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なぜ女性は土俵に上がってはいけないとされているのか

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先日、舞鶴場所でのアナウンス問題について思ったことを記事に書きました。 

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それに関連してふと疑問に感じたのが「そもそもなぜ女性は土俵に上がってはいけないのか?」ということです。伝統だから伝統だからと言われていますが、そもそもなぜなのか。

 

昔の酒蔵が女人禁制だった理由について、「昔の女性はぬか漬けを扱うことが多かったので、別種の菌が混じってしまって酒造りが失敗することが多かったため」ということが近年になってわかり、今では女性の杜氏も普通にいるという話を少し前に聞きました。

 

相撲の土俵が女人禁制な理由については「血が穢れだから」「豊穣の神様が女性で嫉妬するから」など諸説あるようですが、今回は私が一番納得した説をご紹介します。

 

 

はじめは女人禁制ではなかった

 

2008年8月に発表された「相撲における「女人禁制の伝統」について」という論文があります。この中で大相撲の土俵が女人禁制とされるようになった経緯が明らかにされています。

 

現存する日本の書物にはじめて相撲に関する記述が登場するのは、日本書紀の中のことです。天皇に呼ばれて采女(うねめ・天皇や皇后の身の回りの世話をする女性)がその場で相撲をとったという記述があります。

 

現代のような形の土俵が登場したのは江戸時代なのでこの当時に今のような土俵はなかったと思われますが、それでも相撲自体は女人禁制というわけではなかったようです。

 

さてその江戸時代ですが、女相撲が盛んに行われており、女性が男性と同じように上半身裸でまわしを締めて土俵上で相撲をとる様子を描いた絵も残っています。日本書紀の時代から江戸時代にかけても、土俵上が女人禁制になった様子は見られません。

 

それでは、いつから土俵は女人禁制になったのでしょうか。

 

それまでの相撲のイメージを変えたかった明治時代

 

明治時代に入り廃藩置県が行われたことで、大名のお抱え力士として生活を支えてもらっていた相撲関係者は窮地に立たされます。また、近代化・欧米化が進む中で、ほぼ裸で取っ組み合う相撲は野蛮で前時代的だとする風潮もありました。

 

実際に江戸時代の相撲界隈では、買った負けたの乱闘騒ぎで治安が悪く怪我人続出だったり、合併相撲という名目で盲人と女性の性行為を見世物にしていたり、あまりお上品とはいえない実情があったようです。

 

欧米主義に対抗する国粋主義の流れに乗って相撲の地位向上を図りたい相撲界としては、こういったイメージを払拭したかったわけです。相撲を国技にしたのも明治時代のことです。天覧相撲も行われ、次々と来日する外国からの貴賓にお見せする「国技」は神聖なものでなくてはならなかったのです。

 

かくして相撲のイメージアップ戦略の一環として女人禁制の伝統が「作られた」のではないか、というのが論文の結論です。

 

作られた女人禁制とその理由

 

相撲の地位向上を図るには、江戸時代までの野蛮なイメージを払拭する必要がありました。特に前項で挙げたような合併相撲と称したアレコレなどもってのほかです。

女性を相撲から締め出すことで、こういった醜悪な相撲の記憶が人々から消え去ることを期待したのではないか、としています。

 

また、レディーファーストの国から来る貴賓に女性が取っ組み合う姿を見せられないという考えもあったようです。

 

こうして土俵を女人禁制にすることにしたが、これまで普通に女相撲が行われていたのを禁止するには皆を納得させる理由がいるので、神道の穢れ思想を持ち出して後付けの理由をつけたのではないか。

論文ではそう推測されています。

 

今、「伝統」を作るのもありなのでは?

 

古来よりずっと女相撲が行われていたのならば、それが禁止され女人禁制という正反対の状況になったのには何かしらの作為的な理由があるのではないかという考えには納得できます。

 

ただ、論文にはいつの時点で相撲界が「女人禁制」を名言したのかが明記されていないところが引っかかる点ではあります。暗黙の了解ややんわり少しずつ締め出したのがいつの間にか当然のルールのようになっていた的なものなのでしょうか。

 

江戸時代の相撲の野蛮なイメージを払拭するためというのが女人禁制のねらいだったならば、もう十分目的は果たせたのではないでしょうか。

イメージのことを言うなら、昨今の相撲界の状況なんて、ねぇ…

 

今が「伝統」を見直すいい機会なのではないでしょうか。

明治時代に「伝統」が作られたならば、平成時代に「伝統」を作ってもいいはずですよね。

 

■参考

Hokkaido University of Education Repository: 相撲における「女人禁制の伝統」について